ドクターTORAの今日も快腸

大腸の病気(大腸ガン・ポリープ、過敏性大腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病など)が増加しています。ひとりでも多くの方が快腸になっていただくための最新情報を提供してゆきます。

 クローン病の治療にレミケードが使用されるようになってから世界で10年、日本でも5年が過ぎようとしています。
1)レミケードはクローン病の病態の中心であるTNFαを強力に抑制します
2)TNFαはもともと発熱が続いた実験動物で悪性腫瘍が縮小したことから発見された物質であり、TNFαには悪性腫瘍を抑制する効果があります。
3)したがって、レミケードを投与した場合にはクローン病の患者さんで悪性腫瘍の発生が増加するのではないかと心配されてきました。
 実際にはわれわれの体の中で悪性腫瘍の元になる細胞は常に発生していますが、TNFαに限らず、さまざまな免疫系が悪性腫瘍の細胞を殺したり、あるいは細胞の中に、悪性腫瘍にならないように抑制するようにできています。

 現在までのところ、クローン病に対してレミケードを投与して悪性腫瘍が増加するという明らかな証拠は無いようです。
最近、イギリス消化器病学会誌2006年228pにこれに関する報告が出ました。
対象:イタリアの11施設でこれまで悪性腫瘍にかかったことのないクローン病808人を(1999から2004まで)5年間追跡。
グループ1)レミケードを投与されたクローン病404人
グループ2)レミケードを投与されたことのないクローン病404人
結果:グループ1と2で年齢、クローン病と診断されてからの期間、病型、タバコ歴、手術歴に差なし。
グループ1)レミケードを投与された404人
悪性腫瘍:9人(胆管がん1、乳がん3、皮膚がん1、喉頭がん1、肛門癌2)
グループ2)レミケードを投与されたことのないクローン病404人
悪性腫瘍:7人(大腸がん3、皮膚がん1、乳がん1、脊髄がん1、悪性リンパ腫1)
 結論:レミケードを投与されたクローン病の患者さんとレミケードを投与されたことのないクローン病の患者さんで悪性腫瘍の発生には、統計学的には差が無かった
 DR.Tのコメント
 イタリアは人口が6000万人でクローン病が少なくないものの、アメリカ、イギリスの大量のデータからすれば小粒です。この論文はイタリアでレミケードが認可されてからすぐにプランを練って11病院がネットワークを形成して5年間じっくり観察してえられたすばらしい論文です。発ガンの件数としては日本人の場合よりも多い感じがします。論文の対象となった患者さんの年齢層が高いためでしょう。
 大まかな記憶ですが、社会保険中央病院では5年半で継続してみている患者約500人から胆管がん1、白血病1、痔瘻癌5、乳がん1だったと思います。いずれにせよクローン病以外に人生ではいろいろなことがおきますから、長い間に腸管以外にも癌が出てくるわけで注意が必要です

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