ドクターTORAの今日も快腸

大腸の病気(大腸ガン・ポリープ、過敏性大腸症候群、潰瘍性大腸炎、クローン病など)が増加しています。ひとりでも多くの方が快腸になっていただくための最新情報を提供してゆきます。

質問から(インディアン1号さんお待たせしました!)alpha4インテグリン阻害薬について教えてください
答え
 免疫学の発達によって、炎症の成り立ちが細かにわかるようになりました。その中で炎症部位に次々と白血球やリンパ球が呼び寄せられるには接着分子という蛋白が重要であることがわかりました。接着分子にはおよそ10種類のグループがあります。
 接着分子の中でもインテグリン蛋白のグループが炎症部位への接着・侵入に重要であること、中でもα4インテグリンは炎症部位に白血球やリンパ球細胞の集まるための鍵となることから、その阻害薬Natalizumabが開発され、大変期待されました。
 Natalizumabは100%ヒト由来のたんぱく質でつくられた抗体薬で、2001年から3年間に渡り、欧米の142の病院で905人の活動期クローン病患者さんに二重盲検試験(=医師も患者もどれが偽薬か本当の薬かわからない治験)が行われました。Natalizumabは0、4,8週間に投与され、投与開始10週目に評価されました。
 投与開始10週目の評価では
1)奏効率:クローン病活動指数70点以上の低下した患者さんの割合
 Natalizumab投与で56%に対して偽薬投与で49%でした。
2)寛解導入率:クローン病活動指数150点以下に低下した患者さんの割合 Natalizumab投与で44%に対して偽薬投与で26%でした。
偽薬に比べてやや高いものの、レミケードの奏効率70−80%、寛解導入率50−60%に比べるとあまりに低い値でした。この結果は一流医学誌The New England Journal of Medicineの2005年11月に掲載されました。
 また、Natalizumabを投与された患者さんにPMLという重症の脳障害が出現し、開発が中止されました。
 炎症部位への接着を阻害すると言うアイデアは、大変魅力的ですが、白血球やリンパ球の集積はわれわれの使用する郵便番号に比べるとはるかにあいまいなようで、このために脳の血管にリンパ球が異常な集積を起こして脳神経の脱髄を起こしてしまったようです。

下はPMLの脳MRI画像です:病変部は白く変質しています。
PML